斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS 優秀な教員の優遇は正しいか

<<   作成日時 : 2005/11/11 23:41   >>

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 少し前に主幹や首席、総括教員などの中間管理職ポストが教員に導入されつつあるという動きを紹介しましたが、それとは別に授業力のある教員の給与、ポストの優遇措置も教育行政の中で広がる気配を見せています。
○若手育成にベテラン活用、都教委が教師道場開設へ
「若手教員の指導力向上をめざし、東京都教育委員会は来年4月から、「東京教師道場」をスタートさせる。入門者は採用5〜10年の教員で、8人で計50班を編成、“師範”は教え方に定評のあるベテラン教員らが務める。この種の道場を実施している教委もあるが、これだけ大規模なものは例がないといい、都教委では『やる気のある若手教員の技能を高め、修了者がさらに若手に伝える一石二鳥を狙いたい』と期待を寄せる」(読売新聞11月11日)

 たいへん結構な話ですが、ただ、いくつかの疑問もあります。まず、指摘しておきたいのは、教員は仕事の中で力や技術を身につけていきますが、それが機能しなくなっているということです。研究会などで自ら研修する場合もあるでしょうが、以前は先輩から知識や技術を学んできました。しかし、時代の変化からか先輩から後輩への技術の伝達がうまくいかなくなりました。これは学校だけでなく一般社会全体の傾向です。教委は最近、スーパーティーチャーや授業の鉄人などの名称で授業力のある教員を認定し、それらを研修会講師として活用しようとしていますが、これも学校現場での世代間の技術継承がうまくいっていないことが背景の一つにあります。ただ、これだけなら問題はないのですが、このシステムが中間管理職の導入と同様に教員組織に新たな波紋を広げそうなのです。

 例えば、東京都の例では、教師塾への入門者は校長に推薦された者で、指導者となる「授業力スリーダー」も市町村教委などから推薦された教員です。教師塾修了者は次の「授業リーダー」となり後輩の指導を担当し、さらにその中から「授業力スペシャリスト」が選ばれるという仕組みになっています。

 問題は、「授業力スペシャリスト」が主幹などの中間管理職と同じように一般教員よりも給与面で優遇する方針が示されていることです。えっ、それってよいことでしょう、、、と普通は思いますよね。指導力はあるが管理職にはなりたくないという授業一筋の教員も給料面で優遇され、準管理職並みの待遇を受けることができる。つまり、一般教員の上には、将来の校長を目指す中間管理職である主幹(大阪府は首席)、そして管理職にはならないが専門的能力の高い「授業力スペシャリスト」(大阪府では指導教諭)の2系統があり、さらにその上に教頭、校長の管理職があるという組織構造になる。

 おそらく一般社会人で、この組織の在り方に疑問を持つ人は少ないでしょう。民間企業や役所などはほぼこのような構造で出来上がっていますから。しかし、その方式が通用しない、あるいは円滑に進まないのが学校という組織なのです。

 学校現場での反対の理由は、大きく分けて二つです。


1つ目は、教員(教諭)は全員が平等であるべきで、そこに中間管理職やスペシャリストなどのポストを導入することは、教員間に差別・選別をもたらし、教員同士の信頼関係構築を阻み、学校教育を荒廃させるという意見。

2つ目は、中間管理職とスペシャリストのいずれも校長推薦、教委推薦で選ばれることになるため、子供のためよりも校長のため、教委のために働く教員が選ばれ、それらが学校組織の上位層を占めるようになり、学校教育を荒廃させるという意見。

 正直に言って、私はどれが正しいのか分かりません。

組織論的合理的性、地方分権の推進などの現状からみると、教員組織への中間管理職とスペシャリストのポスト導入は不可避であり、授業力の優れた教員の優遇は専門職としてのモチベーションアップにつながると思います。

 しかし、一方でこれらの制度が学校現場に広がった時に起こるであろう混乱、教員同士の摩擦、意欲の低下も高い確率で予想できます。また、最大の懸念は、財政事情を考えれば、中間管理職やスペシャリストを優遇するための財源は、能力の低い(あるいは校長の受けの悪い)教員の給与削減によって捻出せざるを得ないことです。

 人事考課などの導入も含めて優秀な教員を優遇せよというごく当たり前で簡単なことも、いざやるとなるとそう簡単ではないというお話でした。


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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは、天下無敵の問題教師です。コメントありがとうございました。記事読ませていただきました。現場の教員間では、授業の鉄人とかスーパーティーチャーを笑っております。どんなアホな教員がやるんだろうって。鉄人とかたすきでもかけるのかな?なんて。実際なる人は、管理職になりたい方だと思われます。管理職になるための1ステップのつもりで。理論上の授業と実際の子供たち相手の授業は違います。もし、生徒から本当に高い評価を受けている授業上手な方だったら、どんなに推薦されてもそんなスーパーティーチャーや鉄人などにはならず、学校現場を選ぶでしょう。そういう方が現場では本当に尊敬され、上ばかり(管理職にないたい)見ている人は生徒を見ていない人が多いようです。すべてとはいいませんが。
天下無敵の問題教師
2005/11/12 13:43
 天下無敵の問題教師さん、コメントありがとうございます。そちらのブログ面白いですね。このところはまってます。席替えと風水って、笑っちゃいけませんが、やはり笑っちゃいます。
 で、私として教員評価についていつも釈然としない疑問をじつは感じています。新たなエントリーをつくりましたので、またコメントなどいただければありがたいです。
カラ
2005/11/12 23:15
「教師道場」は管理職に誘われましたよ。毎月どこかに集まって研修するらしいです。今は授業の空き時間が少ないので、こういうのに参加するためには、授業をつぶさなければならないのでお断りしました。昇進したいとか、もっといい学校に異動したいという下心があって参加する人はいるようですけどね。
himatee
2005/11/14 23:34
himateeさん、コメントありがとうございます。みなさんの発言を聞いて、教員とは昇進や昇給がモチベーションアップに必ずしもちながる職業でないということがよく分かりました。
カラ
2005/11/15 00:51

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