斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS 学力低下批判は再び起きるか

<<   作成日時 : 2006/03/10 13:24   >>

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 もうすぐ国税還付金がくる季節になります。フリーライターにとってこれは年に1回のボーナスのようなもの。でも、ほとんどが借金返済に飛んでいく、、、、

 さて、今回も来春ごろに告示が予定されている新学習指導要領のお話。中教審の審議経過報告を読んだ方はお分かりだと思いますが、国語、算数・数学、英語の授業時間数増が示唆されている以外は、ほとんど「生きる力」の育成という現行学習指導要領と変わりません、というよりさらに趣旨が徹底されています。

 これに対して、あれだけ学力低下批判を煽ったマスコミの批判は、ないようです。見渡しても産経新聞がくらいでした。もう学力低下批判はブームがすぎたのか、それとも中教審が正式に答申したくらいから批判が再燃するのか、、、、

 そんな中で、学習塾の日能研が日本経済新聞に載せた意見広告が一部で注目を集めているようです。現物がネットでみつからなかったので、「教育記事を考える」というメルマガから孫引きさせてもらいます。

テストにはもっとやれることがある(日能研)
日経新聞(3/6)

○テスト。その起源は、中国で隋代から20世紀初頭まで行われた官史
登用試験の「科挙」と言われています。科挙は、優秀な人材を選抜する
ための手段でした。
その中で問われることのあまりの量の多さに、エピソードも数多く残っ
ています。今日の、人を選ぶための「入学試験」は、その起源から考え
れば、正統派の流れを汲むテストと言えるでしょう。では、「人を選ぶ
ため」という目的を持たないテストー学校の定期試験をはじめとする、
教育の現場で日常行われている、さまざまなテストには、どんな意味が
持たされているのでしょうか?
○問題に対する解答に○と×をつけ、○=「正答の数」を採取して点数
をつける「採点」という行為。すべての問題で○を獲得すると与えられ
る「満点」という勲章。しかしそれらに「子どもたちを育成する」「子
どもたちの成長を促進する」という意味がどれだけ込められているでしょ
うか?○と×とは、答えが合っているか,合っていないか、ということ。
例えば、記述式の問題にしても、作問者の意図に則した答えを書くかどう
かによって○と×が決められてきました。
○当たり前じゃないか。○と×をつけて、点数をつける。それがテストだ
ー。果たして、そうなのでしょうか?そこでは何が測られているのでしょ
うか?もしそれがテスト、と言うならば、それは子どもたちを、子どもた
ちの能力を、あるいは子どもたちがトライした過程を、たった2つのカテ
ゴライズする行為にすぎません。○の数を集計して得点とする採点に、ま
ったく意味がない、とは言いませんが、重大なことに目を背け続けている
ことも事実です。
○本来ならばさまざまな解答が出てきて、さまざまな○があっていいはず
の記述問題。ところが、作問者の掌の上で-「こう尋ねられたら、普通はこ
う考えるよね」「こう考えたら、次はこう答えるはずだよね」という、あた
かも思考誘導を仕掛けられた問題では、○はほとんど同じ解答にしかなり
ません。上手に誘導に乗せられて、作問者の想定する「模範的な答え」を
出した子は○。誘導されずに勝手な方向に歩んだ子は×。いままでは、こ
のような思考誘導的な強制力を持つ問題が、判別力のある「良問」とされ
てきました。逆に「答えがぶれる」「答えが1つに決まらない」「いろいろ
な正答が存在する」という問題は「悪問」だったのですーこれまでは子ど
もたちが「問題」という示された範囲の中で、さまざまにものを考えるこ
とができない問題が「良問」?本当に?
○1つの問題に、1つの正答。そもそもテストの構造は、このせまい関係
の中で成立してきました。しかし、1つの問題に対して考えたさまざまな
答えは、その過程は、価値のないものなのでしょうか?その問題の配点が
5点満点だったとして、作問者が意図した道すじを通った答えにしか5点
が配分されず、その他は0点という割り切り方は、正しい行為なのでしょ
うか?
○本当に大切なことは、子どもたちをあるがままの形で評価すること。
テストによって「思考停止」の状態をつくらないこと。そのためには、と
てもせまい空間しかない「思考誘導的な問題」ではなく、子どもが「思考
を自由に動かせるような適切な空間」を、テストの中でどう提供できるか。
また、作問者だけでなく、採点者・評価者がどれだけ自由な空間を共有で
きるか。子どもが自由に思考できる問題を作ることができれば、子どもの
解答が評価者の空間を広げる。評価者が自由に思考できる空間を示すこと
ができれば、それによって子どもたちの自由な思考空間も広がるはず。
○私たちはいま、テストと採点を根本から見直し始めています。子どもた
ちを○か×かで二分し、それを得点・成績として終わるのではなく、答え
に至るプロセスをつぶさに辿れることで、子どもたちが問題に対して、ど
のようにアプーチしたか、そのアプローチはどんなチカラが組み合わされ,
為されたものなかーまさに子どもたちの思考を「追体験」しながら、評価
しようという採点の考え方。それは学びの本質への接近。テストを通した
学び。子どもたちが「次なる学びの場では、こうやってみたい。こうなり
たい」と思えるテストのあり方。2006年6月。新しいテストを創造す
る日能研の試みに、ご期待ください。

 これと同様のものは昨年中にも載せられていたようで、こんな広告もみつかりました。

 で、やっと、ここからが今日の本論。

●日能研といえば、例の「さよなら台形」という車内広告で現行学習指導要領批判を展開し、学校完全週五日制の実施とともに、急速に業績を伸ばした会社です。いわば、あの学力低下批判の実質的な火付け役とも言ってよいでしょう。その会社が、まさに「生きる力」と同様の趣旨を訴えているわけです。

●リンクを貼って紹介した広告の中では、一昨年末のOECDの学習到達度調査(PISA)の結果に触れています。これは文科省が初めて公式に学力低下を認めたきっかけとなりましたので、知っている人も多いでしょう。しかし、その後に多くの教育学者から指摘されたことですが、PISAは日本流に言えば、学習成果活用能力調査のようなものなのです。つまり、PISAの点数が下がったということは、知識・技能を実生活で活用する能力が下がったということを意味します。

●現在、文科省が進めている学力向上対策、そして来年告示の新学習指導要領も、実は謳っている学力はPISA型の学力、つまり「生きる力」なのです。その意味で、文科省はPISAの結果を深刻に予想以上に受け止めていたと言えるでしょう。

●商売のチャンスをとらえ、時流を見る目があると思われる日能研が、徐々に主張(それが建前だけだとしても)をPISA型学力に移していることは、現在の社会的風潮を考える上で実に興味深いことです。過去の日能研の広告の影響力を考えると、これは今後の世論にも大きな影響を与えそうです。

●まあ、意地悪な見方をすれば、都立中高一貫校などの入試問題が思考・表現力重視の総合問題なので、これを狙った戦略ともとれるし、日能研はテスト実施後にすぐ採点結果が出るコンピューターシステムを今年から全教室に導入しているので、それとの関係もあるかもしれません。また、いまさら古いタイプの学力向上を叫んでも、既に階層社会化しつつある日本では、新しいマーケットを発掘できないと踏んだのかもしれません。

●いずれにしろ、日能研が知識ストック型の古いタイプの学力を叫ぶことから転換したということは、社会も変わったとうことの表れでしょう。ある意味で、上昇志向などに代表される社会の活力がなくなったとも言えますが、、、、、振り返ってみれば、現行学習指導要領は「失われた10年」といわれるバブル崩壊後遺症の中で出されたものでした。

●今年夏に予定されている中教審答申、さらに来年告示の新学習指導要領に対して、果たして学力低下批判が再び出されるのか。ある意味で、それは日本の今後を占う材料になるかもしれません。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
とても参考になります。
今日
2006/03/15 12:31
国立大医学部外国人枠を外語は韓国語で受験し有利に合格した。
在日医師、抜け穴
2006/03/18 14:49

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