斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS 文科省が学校を5段階評価?

<<   作成日時 : 2006/08/29 02:46   >>

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 教員給与について続きをと思っていたのですが、読売新聞で気になるニュースがありましたので、それを。内容は学校評価ですが、記事を読むといかにも文科省が学校に通信簿をつけて評価するようになるというように受け止められるところがミソですね。

学校に“通信簿”…文科省が現場取り組みを5段階評価(読売新聞8月28日)
 文部科学省は、小中学校の授業内容や学校運営などを客観的に評価する統一基準を定め、各学校を「評定5」から「評定1」の5段階で評価していく方針を決めた。


 全国の保護者の多くからは喝采を、教育関係者からはため息を集めそうな内容です。私はこの件については直接に取材していないので、推測になりますが、これは読売のミスリードではないでしょうか。そもそも文科省が学校評価のシステム研究に取り組むというのは、別に新しいニュースでもなんでもないのです。


◎学校評価の義務付けは既定路線である。
 学校評価とは、学校が自分たちの教育活動がうまくいっているかどうかを評価し、その結果を教育改善に役立てるものです。方法としては、自分たちで評価する自己評価、外部の専門家など第三者に評価を依頼する外部評価の2つがあります。

 既に大学・短大では、すべての学校に自己評価と外部評価の両方の実施と公開が義務付けられています。また、高校以下では2002年度から小学校設置基準(中・高校もそれに準拠)で、自己評価の実施が努力義務とされ、公立学校の96・5%が学校評価を実施しています。

 また、昨年10月の中央教育審議会答申では、学校評価を努力義務から義務付けにすること、外部評価の導入を努力義務とすることが打ち出されています。時期は未定ですが、おそらく次期学習指導要領の実施、あるいは移行期間に合わせて実現するのではないでしょうか。というわけで、学校評価の義務付けは文科省の既定路線なのです。


◎既に文科省は着々と学校評価体制の研究を進めている。
 文科省は今年3月に学校評価ガイドラインを作成しています。さらに、学校評価推進調査研究協力者会議を設置し、学校の外部評価の体制や方法の研究に着手しており、読売新聞の記事はここからソースを得たものだと思われます。

 この一環として全国約100校で文科省と専門家による外部評価研究のための調査をすることは、既に今年度予算に盛り込まれています。つまり、読売新聞の記事は、その研究のための外部評価の成績を「通信簿式の5段階」で示すということだけが、新しいニュースなのです。しかし、それも記事によると成績は公表しないということですから、報道としては竜頭蛇尾ではないかと思うのですが。


◎義務教育の質の保証という名目で新たな教育行政システムを模索する文科省。
 規制緩和、地方分権の推進の中で、総務省や財務省、内閣府などさまざまなところから文科省は学校教育の自由化を迫られています。この中で、都道府県と文科省の対立なども生まれつつあります。

 これに対して文科省が打ち出しているのが、国による「義務教育の質の保証」というシステムです。これは、地方分権、規制緩和の時代に各地方自治体や各学校の権限を大幅に拡大する一方で、学校教育に対する国の影響力を確保しようというものです。これを新時代に対応した教育行政システムの再編と見るか、学校教育への影響力を死守しようとする文科省の思惑と見るかは、人それぞれでしょう。

 具体的には、学校評価の義務化、外部評価の努力義務化により各学校の教育の向上を図ると同時に、全国学力テストの実施で教育成果を具体的に測定するということになりまする。つまり、学校評価(主に外部評価)と学力テストで、国が直接に学校に関与できる道を開くものといってもよいでしょう。このモデルとなっているのが、イギリスの教育改革です。



◎誰が外部評価を行うのか。
 先ほど学校の外部評価は努力義務になると述べましたが、日本の教育行政の体質を考えると、実質的にほぼ義務化と同じ状況になると思ってよいでしょう。高校以下の外部評価はまだ日本では全く確立されていません。このため文科省は、読売新聞の記事にあるように自ら試行を行うと同時に、民間にも研究委託しています。また、全国約400校を学校評価の研究校に指定しています。

 さて、将来的に大きな問題となるのは、高校以下の学校(実質的には公立学校)の外部評価をどこが実施するのか、その成果をどこが管理するのかということでしょう。

 都道府県教委がつくった外部評価団体が行ったり、民間のシンクタンクが外部評価を請け負うという分には、あまり問題はないと思います。まあ、学校にとっては大問題なのですが、要するに仲間内であり業者であるわけですから。

 考えられる選択肢は、3つでしょうか。
1 どこに外部評価を委託するかは地方自治体や各学校に任せる。
2 文科省が民間の外部評価団体を認定して、そこが実施する。
3 文科省、またはその準機関が実施する。


 このうち、日本の大学・短大は、タイプ2の方式で外部評価が実施されています。また、イギリスでは、教育省とは別組織の独立行政法人「教育水準局」により実施されておりタイプ3といえます。


◎ポイントは外部評価に国がどうかかわるか。
 繰り返しになりますが、近い将来、高校以下の学校の学校評価は、自己評価が確実に義務化され、外部評価も公立学校では実質的に義務化と同じ扱いになることは、まず確実です。

 そのとき、ポイントとなるのは外部評価に文科省がどうかかわってくるかでしょう。このへんを文科省はどう考えているか、私はまだ知りません。

 ともかく外部評価が、上のタイプ1から3のどれで行われることになるのか。それによって日本の高校以下の公立学校の在り方は、大きく変わることになるでしょう。

 ちなみに、昨年夏の概算要求で文科省は、初等中等教育局内部に「教育水準部」の設置を要求していました。結果的に部の新設は認められませんでしたが、名前が意味深です。



 ※イギリスの教育改革については、「世界」9月号(岩波書店)にある阿部菜穂子「岐路に立つイギリスの『教育改革』」が参考になります。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
非常に単純明快な疑問ですが、生徒をごく普通に評価している教員が、自らを評価されることを極端なまでに嫌がるとは、何と言う矛盾・我侭・身勝手なことでしょうか?
CFO
2006/08/31 11:47
評価を受ける対象となる行動や成果は、子どもの場合は学習、教員の場合は仕事という違いがあるからでしょうか。

ちなみに、教員の間でも仕事に対する評価制度の導入には、さまざまな意見があり一枚岩ではないようです。

まず、業績評価や成果主義に賛成、あるいは頭から反対というタイプ。もう一つは、業績評価は基本的に反対ではないが、どんな基準で誰が評価するのはということに懸念があり、現状では反対というタイプ。もう一つは、不安はあるけどともかくやってみたらよいというタイプ。最後は、どうせ現場を理解していない行政のやることだから私は知らん、勝手にどうぞというタイプ。

で、教員を評価して給与の高低をつける。では、その評価基準は、、、、何。

有名校などへの進学率、学力テストのクラス平均点、校長の学校運営に対する貢献度、、、考えると結構悩ましい問題です。
カラ
2006/09/02 22:53

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