斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS 履修不足・必修逃れが招く危ない将来

<<   作成日時 : 2006/11/25 11:04   >>

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教育基本法改正の話をしようと思ったのですが、気力がわかないのでまたいずれ。で、高校の履修不足・必修逃れ・未履修の一連の問題について、まとめというか総括をしようと思います。というのも、、、、、この問題を契機に教育基本法改正とも関連して、なんだか世の中が危ない方向にいきそうなのが気になるからです。

◎履修漏れ、私立校の22%に 計665校 文科省調べ(朝日新聞)
 「高校の必修科目の履修漏れ問題で、文部科学省は公立と私立の計665校で漏れが見つかった、と22日発表した。私立の履修漏れの割合は全体の21.6%で、9.1%だった公立の倍以上だった」

 まだ確定値ではないとのことですが、おそらくこれが最終値に近いものでしょう。公立高校の約1割、私立高校の約2割で必修逃れ・履修漏れがあったということです。


○正義の味方マスコミは、逆に法的規制強化を招いたのではないか。
 大学受験や私立中高一貫校受験を商売にしているマスコミが、正義の味方面できるのか、、、、とは言いますまい。大人の社会てはそんなものです。

 ただ、今回マスコミが一斉に必修逃れ・履修漏れを「学習指導要領違反」として批判したことは、正しかったのか。いや、明らかな法令違反だから、それを批判するのは間違いではない。けれどもそれは結果的に、まがりなりにも「学習指導要領は最低基準である」ということを文科省が認め、弾力化の方向に進んでいる教育課程行政を、二昔くらい前に後退させる恐れがあるのではないだろうか。

 必履修科目を学ぶのは最低基準であるということは、その通り。だが、社会やマスコミを味方につけた政治家は、現在、教育委員会の権限強化、、、、つまりは学校に対する監督の強化という方向に入っている。

 例えば、「日の丸・君が代」の掲揚・斉唱は、学習指導要領に書いてある。これをしなければ学習指導要領違反てある。極端な話、これからは学校現場が地域や子どもの実情に応じて裁量でしたことも、学習指導要領違反の一言で断罪される可能性があるのだ。

 法令違反は原則としていけない。だが、それを批判するには、その問題の本質を理解した見識が欠かせない。そんな見識を持つこと、違法な実態から制度自体の内容を疑うことを忘れては、マスコミとはいえない。


○なぜ、学習指導要領違反はいけないのか。
 今回の問題が大きな騒ぎとなった理由は、学習指導要領違反の原因が大学受験のためだったからだ。これが、マスコミや社会の批判に、いわゆる錦の御旗を与えた。これが、「日の丸・君が代」など違う問題だっからば、こうも批判は起きなかったろう。

 なぜ、大学受験のための学習指導要領違反はいけないのか。問うまでもない。学校教育は大学受験のための教育ではないからだ。

 だが、果たしてそんな教育論で批判した人たちがどれだけいるだろうか。実際には、国立大や私立難関校に行くため、おまえたちだけがうまい汁を吸ってのは許せないという気持ちが社会の底にあったのではないか。

 法令違反を慣行として見逃すことをせず、マスコミや社会全体が批判するのは、健全な社会をつくるために必要なことだ。それにもかかわらず、最近の談合批判、裏金批判などマスコミや社会の対応を見ると、そこからは「健全さ」というものがなぜか微塵も感じられない。

 批判される行為は確かに間違っているし、批判する者の言い分も正しい。それなのに、すがすがしさが全く感じられないのはなぜか。それは、おそらく批判する側が、大義を玩具のように振りかざして、自身のフラストレーションを解消しているだけだからだ。


○では、マスコミは、私立中高一貫受験や大学受験をあおることをやめるのか。
 今後、中学校まで調査した結果、私立中高一貫校の学習指導要領が明らかになるだろうか。もし、明らかになった時、マスコミはそれをたたくか。
 
 やるはずがない。商売だから。県立高校の校長を自殺するほど攻めても、灘高校の批判などしないだろう。

 では、私立中高一貫校が学習指導要領をきちんと守ることを社会は望むか。私は、望んでほしいと思う。


 で、ここからが本論。

○マスコミや社会が学校批判をしているうちに、なんだか危ない方向に向かっている。
 安倍首相の目指すところは、改憲というのは本人自身も認めている。

 それはさておき、現在の規制緩和と地方分権における教育改革は、学校や地方自治体の裁量権を拡大する方向で走っている。しかし、国から見ると、ここに一つ問題ができる。

 誰が、裁量権の拡大で学校や自治体ごとに多様化した教育の質を保証するのかということだ。そして、英国の教育改革をモデルとする安倍内閣が打ち出そうとしているのは、おそらく「国が保証する」という考え方だろう。

 この考え方は、文科省の中央教育審議会でも答申されており、学校評価や全国学力テストの導入なども、この方針を基に文科省は制度設計している。

 だが、安倍内閣の動きを見ていると、中教審が問題教員の排除という方針を否定して、新たに資質のリニューアルという理念で制度設計した教員免許の更新制を、問題教員排除方策に強引に押し戻そうとしているように、より国の監督権を強めることを「国による保証」だと考えている節がうかがえる。

 例えば、履修漏れやいじめを防止するために教育委員会の監督権を強化するとして、今度はその教委を誰が監督するのか。現在の教育行政制度では、文科省は都道府県教委に対する「指導・助言」の権限しかない。


 学習指導要領違反だ、いじめ自殺だと騒いでいるうちに、学校も教委も駄目だとなれば、結局のところ監督者は国しかないという選択に追い込まれるのではないだろうか。

 安倍内閣が提言している学校選択制をはじめとする市場主義、競争原理による公立学校の多様化を、一概に否定するつもりはない。

 しかし、その後に見え隠れする強権的な国家像を見ると、その教育改革には新自由主義や競争原理がもたらすものとは、また別の陥穽が待ち受けているのではないかという気がしてならない。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
おひさしぶりです。私も未履修問題には大きな違和感がありました。まさに「2昔前」の高校指導要領で学んだ者として。

ルール違反はいけませんが、ルールといってもいろいろな種類があります。守らないと国家から罰則を加えられるルールが一方にあるとすれば、守らないと他人から白い目で見られるだけのルールもあります。どちらも守らなくてはいけないことには変わりないのですが。

私はこれ以上の言葉を持ち合わせていません。今回のブログでは、私に欠けていた言葉をこういうことだったのです・・・
さはら
2006/11/30 17:32
さはら君、ごぶさたです。
ルール違反はいけない、、、でも、ルール自体が間違っていることも世の中にはあります。ある意味、常に常識を疑う必要がある。
ルール違反だと、考えもなく批判していくと、最終的には制度に呪縛され、その制度が何のためにあるのかか見えなくなります。制度は、システムのためにあるのではなく、人間のためにあるのです。

それにしても、教育系の新聞、雑誌はこのような問題になると、とたんに無力さを露呈しますね。当たらず触らず、、、時の過ぎ行くままに。
カラ
2006/11/30 21:12
はじめまして。CRN推奨ブログからやってきました。履修不足について拙ブログでも遅ればせながら記事にしたいことがあって、参考になりました。記事の中でリンクを貼らせてもらっても良いでしょうか?

ブログURL
http://penguin-mo.mo-blog.jp/penpen/
働くペンギン ちゃい
2006/12/05 23:52
働くペンギンちゃいさん、リンクフリーですのでご自由に。返事が遅れまして申し訳ありません。こちらからも訪問させていただきます。
カラ
2006/12/07 00:21

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