斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS これは教育行政の後退だ

<<   作成日時 : 2007/02/06 21:25   >>

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 安倍首相は、教員免許法、学校教育法、地教行法の3改正案を今の通常国会に提出すると言ってますが、どうみても教員免許法、そして学校教育法の教育基本法関係部分以外の改正は時間的に無理です。無理を承知でやる、しかもほとんど具体的議論なしで。これを無茶苦茶といわずになんというのでしょうか。

 まあ、一般には関心が薄いかもしれませんが、この中で特に問題なのが地教行法改正です。

○不適正教委に是正勧告 再生会議学校分科会が改革具体案(朝日新聞)
○文科相が教委に是正勧告 いじめ不対応などの場合(読売新聞)
○教育再生会議:教委評価の第三者機関、月内に具体案提示(毎日新聞)

 各紙ともに扱いは小さいようですが、内容的には今後の日本の教育行政の在り方を左右する問題です。

 そもそも教育再生会議では教委制度の在り方は当初、課題に挙がっていませんでした。それが、いじめ自殺問題、高校の未履修問題が大きくマスコミで取り上げられたことで、急遽、課題に上りましたが、実質的には思いつきの羅列以外の審議は行われていません。その思いつきを議論として深め、国民に問うこともなく拙速に法改正に盛り込もうというのは、重ねて言いますが無茶苦茶です。

 学校や教委に対する国民の不信は深く、それを是正して駄目な教委を指導することに何の問題があるのかと思う方は多いでしょう。

 しかし、教育再生会議が押し進めようとしているのことが具体化すれば、国、都道府県、町村、学校という公教育のピラミッド型行政に時代が逆戻りしてしまいます。

 これは、規制緩和と地方分権により地方自治体と地域住民が教育行政に責任を持つという現在の教育行政改革の流れに逆行するものです。



 現在、文科省が進めている教育行政の改革は、地方分権と規制緩和を背景にして、公立小・中学校に対する教育行政の権限を都道府県から市町村に下し、国は学校評価と全国学力テストによって教育の国家的保証をするというものです。

 その基になっているのが1998年の中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」です。ここには、旧来の中央集権的なピラミッド型教育行政の弊害とその反省が示されています。


 これに対して教育再生会議に教委制度見直し論は、都道府県「教育委員会外部評価委員会」を設置して市町村教委の第三者評価を行うなど、明らかに旧来のピラミッド型教育行政への回帰を狙った内容となっています。


 市町村の実態に詳しい人ならば分かるかもしれませんが、市町村にとって国はあまり関係ないのです。それよりも都道府県です。その都道府県教委が市町村教委の評価権限まで持つとなれば、もはや市町村教委は自由に独自の教育行政などできなくなります。

 さらに、行政の出す命令はピラミッドの下にいくほど硬直していきます。ピラミッド型行政は、画一化、硬直化、そして当事者意識の欠如による無責任化を招くのです。

 これは実話ですが、ある市が独自の教育改革をしようとしたら、都道府県教委から待ったかがかかりました。県教委としては認められないというのです。しかし、ある会合でそこの市長が文科省官僚に取り組みの内容を話したら、「それはよい。どんどんやってください」と応援されたそうです。まさに、行政組織の思惑が下にいくほど雪だるま式に重なっていくという見本でしょう。

 いじめや体罰などのニュースも大事ですが、ほんの少しだけ教委制度のニュースにも注目してください。もし、学校や市町村教委に至らない点、間違った点があるならば、それを正す第一義的責任は住民にあるはずです。

 それを市町村が悪ければ都道府県、都道府県が悪ければ国と、上へ上へと監督を求めていけば、とどのつまり国がすべてであり、都道府県、市町村はその代行機関にすぎないという大昔の教育行政に戻ってしまいます。


 現在の市町村教委が有効に機能していないとすれば、その原因は都道府県教委がほとんどの実権と財源を握っているからです。

 例えば、教員の人事権を市町村に移しても、教員給与の財源がなければ機能しないのは明白です。教委改革とは、市町村教委が自らの責任を十分に発揮できるよう財源と権限を与えることであり、都道府県や国の監督権を強化することではないと私は思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いつもながら切れのある文章でよく分かりました。
ただ、今回の地方行法改正案は国民、市民、教員、そして教育委員会に任命される先生方に教育委員会の機能を再確認されるだけの意味はあるように思います。本来の教育委員会は独立自立の立場にあるのにそうでなかったかのような雰囲気が今まであったと思います。特に、一般教員は文科省の言うことは絶対、県教育委員会の言うことは絶対、市町村教育委員会の言うことは絶対で、すべて上意下達だと思っていた方が多いと思います。
財政的余裕・人事権がない市町村教育委員会では結局、上を見ないと何もできないということは今のままだと変わらないと思いますが、どのように考えればよいでしょう。
so
2007/02/07 14:18
soさん、いつもコメントありがとうございます。で、どのように考えればよいのか。一介のフリーライターには荷が重い質問です。結局のところ地方自治と義務教育の関係はどうあるべきなのかということなるのですが、まだ分かりません。でも、考えていきたいと思っています。
カラ
2007/02/09 00:47

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