斎藤剛史の教育ニュース観察日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 大学の質の保証が招くのは後期中等教育の複線化か?

<<   作成日時 : 2008/01/15 00:43   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 12

今回取り上げるのは地味なニュース。でも、この影響はもしかしたらかなり大きいかもしれないと私は思います。

○大学評価で統一基準を研究(読売新聞1/13)
 OECDの非公式教育相会議が東京で行われ、「高等教育の成果の評価」について国際的統一基準をつくり大学評価を行うための研究をすることで合意したというニュースです。

 地味です。ほー、そうですか、、、、で普通なら終わりです。でも、、、、、もし、これが実現すると一番影響というか被害を受けるのは「日本の大学」だと私は実は思っています。施設や設備などの教育条件の評価ではなく、学生の教育成果という基準で見た場合、世界レベルの高等教育水準に達する学生を送り出していると胸を張れる大学が、いったい日本に何割あるでしょうか。

○大学教育の質の保証をあせる文科省 
 確かこの問題は、アラブの王族など金持ちの子女に学位を乱発する大学が西欧で増加していることが発端だったと記憶しています。しかし、一般的には、西欧などの各国では大学進学率自体が低いのでさほど問題ないでしょう。大学進学率が高い米国では入るのは簡単だが出るのは難しいという『厳格な成績管理』が一般的に導入されており、教養教育、研究者養成、専門家育成など大学の機能分化も進んでいるので大丈夫でしょう。しかし、日本の大学はどうでしょうか、、、、、、。

 文部科学省の中央教育審議会は昨年、「学士力」などの言葉がマスコミで話題になった学士課程教育の質の保証に関する報告をまとめています。この背景には、現役大学等進学率が昨年春に初めて50%を超えたという大学教育のグローバル化という問題がありますが、国際的な大学評価の動きも念頭にあったはずです。このままいけば、日本の大学教育に対する世界的な信頼が失われかねないという、、、、、、。


○大学に巻き込まれる高校教育
 しかし、ことは大学教育の質の向上というだけにとどまりません。中教審の大学分科会では「高校教育の質の保証」も検討テーマの一つになっています。また、一般には報道されていませんが、同じ中教審の教育課程部会でも「高校教育の質の保証」がテーマとして議論されています。ようするに、日本の大学教育の質を向上させるには、大学だけではなく高校教育にまで手を入れないといけいなという認識が中教審、つまり文科省にはあるのです。

 では、高校教育の質を上げるにはどうするか。ずばり、大学を受験するために資格制度を導入することです。結局は批判が多くて第三次報告には盛り込まれませんでしたが、昨年末に教育再生会議で議論された「高卒テスト」ですね。

 ひねくれた私は、「高卒テスト」の議論は、世論の反応を見るためにわざと文科省の事務方が教育再生会議に持ち込んだのではないかという全く根拠のない妄想までしてしまいます。


○行き着く先は後期中等教育の複線化か
 中学校卒が入る5年一貫の高等専門学校(高専)があるものの、日本の後期中等教育は高校という制度にほぼ一本化されています。実際は、学力、進路などにより同じ学校として議論できないほど高校は多様化しているのですが、高校を卒業すれば大学受験ができるということに変わりはありません。

 現在の大学が仮に何割かが経営的理由で淘汰されたとしても、現役高校卒の50%が大学等に進学する現在の状況が続く限り、大学教育の質を向上させることは難しいでしょう。米国のような「厳格な成績評価」は日本の風土に合いません。

 となると、大学受験者を絞らなければならない。しかし、同じ高校教育を受けながら、大学を受験できる者とできない者が分かれる大学受験資格試験のようなものも、はやり日本の風土に合わないことは昨年末の教育再生会議の議論やそれに対する世論の反発で明らかです。

 では、どうするか、、、、、、後期中等教育を複線化し、大学進学を前提とする高校、専門的な技能者養成の職業学校に再編していくことではないでしょうか。

 いますぐというわけではありません。しかし、あまり遠くない将来、後期中等教育の複線化という課題が出てくると私は思います。その発端が、もしかしたら今回の国際的な大学評価の話ではないかというのが私の考えです。

 そのように考えると、

○工業高や商業高、5年制職業校に再編…政府・自民が検討(読売1/8)

 職業高校を統合して5年制の職業学校をつくろうという上の記事のについても、単なる職業教育の活性化などというのとは違った読み方ができると思います。


 大学の国際的な質の保証という世界的な要請を前にして、日本の教育は
@18歳で一斉に大学進学することをやめて、多様性な年齢層を相手に機能分化した大学・大学院が厳格な教育を行う米国型
A進学か職業かという階級制度のなごりを残した複線化された後期中等教育を持つ西欧型

 のいずれかを選択するか、あるいは日本独自の方法を新たに見つけ出すことを迫られているというのが現状なのではないでしょうか。
 

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
私の住んでいるところは田舎なのですが、普通高校が公立二校、私立二校、そして、商業高校と工業高校がそれぞれ1つずつありますが、少子化(またかといわれるかもしれませんが、本当なので・・・)の影響で、工業高校はかなり定員割れが生じていますし、商業高校はそもそも定員がかなり少ないです。そして工業高校からも大学に進学する生徒が少数ながら確実にいますし、専門学校などの進学率は高いようです。

そして、10年もすれば地域内のどこかの高校が確実に消滅してしまうぐらい、少子化が進行しております。

人気のない高校は、少子化によって、消滅してしまう可能性があります。

全国的には、どういう状況でしょうか。

日本各地で総合学科の高校などが、いくらか設けられていますが、これは、大学教育への間口を広げようというようなことだと思います。

5年生職業高校(実現するかどうかはわかりませんが)と総合学科の高校は性格がずいぶんちがいますが、どう折り合いをつけるのでしょうか。

かかか
2008/01/15 20:54
「職業高校を統合して5年制の職業学校」この記事を見て今更なぜだろうと思っていましたが、理由が分かりました。私は、高専出身者です。現在の高専の現状は、高校大学の一貫教育になろうとしています。5年卒業後、大学の資格を取れるプラス2年?の延長がなされるようになったと聞きます。
持論ですが、義務教育以後は力をつけるための勉強をすることが本筋で見栄や飾り、遊びのために行くものではないと思っています。日本人は見栄が強すぎるのだと思います。しかし、見栄をやめなさいと言ってもそれを規制する制度は作れそうもないので職業高校統合なとという方法をとらないと行けないのでしょうね。
so
2008/01/15 22:10
連投になってしまってすいませんが。

もし5年制職業高校という、案が実現したら、生徒の中退率はどれぐらいになるでしょうかね、中退してしまった生徒へのケアというのか何事かの措置が取れるような用意も必要だと思います。

修業年限が長くなると、その分中退者の出現率が増えると思いますが、それらの可能性も考えた上での案なのでしょうかね。
かかか
2008/01/15 23:01
高専出身者です。工業高校に勤務したこともあります。私の出身学校では40人中5人ぐらいは1年ぐらいまでに学校(工業)になじめないと進路変更。3年までに5人ぐらい留年。工業高校ではもう少し進路、退学者率が多かった。その分、進路、退学者には生徒指導部なども入ってかなり話し合いをしていました。
同級生の半数以上は工業系に就職、それ以外に就職した私なども含めて、5年間も専門ばかり勉強すると工業にそれなりのプライドと知識がつき卒業後の方が話が合う気がします。
同じことをやり続ける良さの一つだと思います。
so
2008/01/20 16:59
お返事有難うございます。進路の見通しがつきやすい分、中途退学が起こりにくいのかもしれませんね。
かかか
2008/01/23 23:33
かかかさん、soさん、コメント遅れまして申し訳ありません。ブログ更新をしばらくしていなかったもので、じつはコメントの管理を今まで忘れていたのです。当ブログはコメントの内容を通常表示しない設定にしてあるもので、うっかりしました。

高校は現在、どの都道府県でも再編計画という名前のは統廃合が続いています。このため各高校き生き残りを必死で模索しており、総合学科への衣替えなどがその手段になっています。

それと高専の卒業生は現在、半数以上が大学編入するか、続けて2年間の専科に入り大学院入学資格をとっています。高専関係者の間には賛否両論あるようですが、この流れは止まらないでしょうね。
カラ
2008/01/27 01:17
 「5年制職業高校」について、私的な考察をまとめるためにあちこちネタをさがしていたらこちらに当たりました。現役の高校教師です。とても参考になりました。
 特に「単なる職業教育の活性化などというのとは違った読み方ができる」という部分にはっとさせられました。
 私個人的には教員免許の問題が最大のネックではないかと思います。ですので、5年制実現の早道としては、「現在職業校かその過去を持ち、大学と系列にある私学の高校」が、最も近い存在だと思いますが、如何に?
HOLST
2008/03/11 23:41
5年制高校はまだ自民党の一部に案があるというだけで、文科省は直接にコミットしていないようです。
ただ、具体的方法を考えるならば、中学卒業者を対象にしている高専は5年一貫教育なので、高校を高専に衣替えするというのが一つ。
もう一つは、3年制のまま上に専攻科2年を加えて5年一貫とする現行の衛生看護科のような方式をとること。
3つめは、全く新しく5年制高校という制度をつくり、中等教育を複線化すること(基本は高校なので高校教員免許で対応)でしょうか。
いずれにしろ高等教育との接続が最大の問題となるでしょうが。
カラ
2008/03/12 18:23
先だっての書き込みからかなり経ってしまいました。20年間の公務員としての商業科教員から転じ、春から普通科の私立高校・情報科の教員になりました。
この件での論文書きがなかなかまとまらず四苦八苦しています。
さて、5年制になった場合に高校教員免許で対応できるのでしょうか?私はできないと思っていますが?
工業高専の教員は教諭ではなく「教授」や「準教授」なのでは?(法的な裏付けは分かりませんが)
それに高校教員免許ではあくまでも「高卒」生徒しか教えられないのでは?
5年制の高専を卒業すると「準学士」だけど、新設5年制高校が高校免許だけの教員集団で「準学士」過程をやっていいのでしょうか?
HOLST
2008/05/22 00:04
(続きです)
あるいは5年掛けての「高卒」学校を作って、果たして生徒が集まるか?50%を超えた大学進学状況で5年制の「高校」のままでは複線化にならない気がします。
大学編入か5年+2年の専攻科で学士取得や大学院進学をする工業高専と、商業や農業、既存の工業高校の3年+2年とは分けて考える必要はあるように思いますが?
工業高専のビジネスモデルは大いに参考にするとして、教員免許はどうも引っかかっています。
私の勤務校は系列に4年制大学もある学校法人です。それ故に気になるテーマであります。
HOLST
2008/05/22 00:05
5年制高校は現行制度ではできません。学制改正を必要とするので、それに現行の免許法体系を当てはめようとしても意味はないと思います。ちなみに現行制度でいえば、高専教員には教員免許は必要ではありません。また、高校の専攻科の教員にも免許は必要ありません。高校看護科の専攻科では教員免許のない人たちが指導してます。
私は5年制高校が実現するとは思っていませんが、やるとすればおそらく免許法を改正して高校教員免許を当てはめると同時に特別免許状の要件弾力化によね社会人登用しかないかと思います。
カラ
2008/05/23 16:16
さらに5年制高校と高等教育との接続ですが、このことを考えること自体が、5年制高校の趣旨と矛盾しています。5年制高校は高等教育機関に頼らず、初中教育だけで優れた中堅技術者を養成しようというものですから、高等教育への進学を前提すると制度目的がおかくなります。考え方としてはドイツの職業学校みたいなものでしょうか。
とすると、高校卒とは別に中堅技術者として社会的ステータスを得る称号(マイスターみたいなもの)を5年制高校卒に付与するという考え方もあるかと思います。
カラ
2008/05/23 16:22

コメントする help

ニックネーム
本 文
大学の質の保証が招くのは後期中等教育の複線化か? 斎藤剛史の教育ニュース観察日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる