顧客ニーズに応える学校とは

 地域住民などによる学校運営協議会が、学校の予算やカリキュラム編制の承認権を持ち、教員の人事にも関与できるコミュニティ・スクール(地域運営学校)という新しい形の公立学校制度が今年度から始まっています。そのうちの一つである東京・足立区立五反野小学校の三原校長に話を聞く機会がありました。三原氏は、ベネッセ出身の民間人校長です。足立区は区立小・中学校とも学校選択制を導入しており、保護者と子どもは入学する学校を選ぶことができます。さらに、地域住民が学校運営にかかわる権限まで持つ学校、ある意味で日本の公立学校の最先端を行くのが五反野小学校でしょう。

 三原校長にそんな学校での校長の在り方を質問したところ、次のように断言されました。

校長の仕事は、地域や保護者、子どものニーズに応えることであり、自分の教育理念を具体化することではない

 逆説的ですが、目からウロコでした。学校選択制時代の学校とは、それぞれの教育理念を基に特色ある学校づくりを進め、それに呼応した保護者や子どもが集まるものと私は考えていたからです。そんなことは私立学校に任せればよい。地域の公立学校は、地域住民、保護者の教育ニーズに応えることで、学校を選んでもらう。校長の教育理念などいらないということでしょうか。

 まあ、実際はどんなニーズに応えるのか、どう具体化するのかなどで、校長や教員の教育理念にかかわるわけで、教育理念がいらないということにはならないでしょうが、民間出身を意識した三原校長独自のレトリックでしょう。それにしても、公立学校で大事なことは地域住民や保護者の要望に応えることだという姿勢は、特色ある学校づくりのために徒労ともいえる特色づくりに明け暮れている学校現場の泥沼状態を打開する鍵だと思います。

 そして、もう一つの鍵は、三原校長の次の言葉でしょう。
要望に応えるのだから、その実現のために学校は地域、保護者にどんどん注文をだし、協力してもらう

 地域や保護者の教育ニーズに応える教育は、学校や教員だけでは十分にできない。だから、学校はどんどん要望を受け付けるが、地域や保護者にも学校の要望を聞いてもらい、いやでも協力してもらう。それが地域の責任であり、その学校を選んで子どもを入学させた保護者の義務だ、と解釈しました。現在の教育ニーズに応える学校とは、教員によるニーズのつまみ食い、あるいは、際限のないニーズに学校が振り回されることを指しているように思います。そうではなく、ニーズに応えるために、ニーズを出した地域や保護者にも協力してもらう。

 企業は経済的利益を上げるために顧客ニーズに応えますが、顧客に注文をつけたり協力を求めたりはしません。これに対して、公立学校は顧客ニーズに応える一方で、顧客である地域や保護者に注文をつけたり協力を要請することができる。なぜなら、地域や保護者は、公立学校の顧客であると同時に当事者の一人だからです。顧客ニーズに応える学校というと、まだまだ反発する教員が多いですが、このように受け止めてみたらどうでしょうか。

 なお、この文章は私、カラが三原校長の言葉を主観的に解釈したものであり、内容に関する責任のすべては私にあります。

 五反野小学校の取り組みについて、私なりに紹介したエントリーを新につくりました。よろしければそちらも併せてお読みください。http://cala99.at.webry.info/200509/article_12.html


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この記事へのコメント

madographos
2005年09月19日 10:47
読ませていただきました。私見ですが,もともと公立学校の校長に「自分の」教育理念を具体化するというような権限はないと思います。地域の付託に答えて公教育の理念を全うするのが校長の職務です。また双務契約的な観点は,公立学校の義務教育の考え方とは相容れません。なぜならば保護者のニーズがどの学校とも合わず,学校の協力要請に答えられない場合,理論的にはその保護する子女は義務教育を受けられなくなってしまうからです。
カラ
2005年09月19日 12:53
madographosさん、コメントありがとうございます。そちらのブログにコメントしたときも、おしかりを受けたような(笑。
このエントリーの趣旨は、市場原理導入、学校選択制などについて触れたものだとは本人は思っていません。公立学校の教育は何のためにあるのか、学校と地域・保護者の関係はどうあればよいのかといったことに、ごくありきたりの考え方を述べたものです。
丹澤 三郎
2005年09月19日 19:41
「なるほど、そういう考え方もあるかな…」と思いました。公教育のあり方を考えさせられる一方で、「民間校長だから、何かを変えなくてはならない」という視点も見え隠れします。しかし義務教育における、地域連携はこれからの時代、強化していくべきことかも知れません。
カラ
2005年09月19日 22:38
丹澤さん、コメントありがとうございます。これだけ教育の多様化が進む中で、義務教育の公立学校は地域と連携するしか道はないのではないかと思います。よろしければまたおこしください。
七星 来人
2005年09月19日 23:43
面白い記事でした。その後どんな要望が学校に寄せられ、学校は地域や家庭などにどんな要望をしたのでしょう?
とっても興味があります。また取材する機会があったら教えてくださいね。
なお、勝手ながら私のブログにTBさせていただき、エントリーさせていただきました。
カラ
2005年09月21日 01:27
七星さん、コメントありがとうございます。学校の実践を詳しく伝えるというのは、なかなか難しいことですが、新しいエントリーを作りました。教育ニュース観察の趣旨から外れるのですが、たまにこういうものもよいかと、、、。
かいちょー
2005年09月21日 16:25
トラックバックありがとうございます。
コミュニティスクール、五反野小学校については関心を持っていましたので、興味深く読ませていただきました。

 こちらからもトラックバックさせていただきます。

 それにしても、地域連携と学校選択制という、相容れがたいふたつの施策を同時並行で行う行政に???です。
かいちょー
2005年09月21日 16:37
「校長の権限」>madographosさん

 校長が自分の教育理念を具体化する権限がないというのも分からなくはないのですが、その“教育理念”というのが曖昧にしか定められていないし、知・徳・体どれに重点を置くかといったことは、それこそ「校長の権限」で定められている現実があるのではないでしょうか。中学受験を重視して知育を重視する学校もあれば、徳育や体育を重視する学校もある。そういう差異は“教育理念”というコトバで表現できるものとはまた別なのかな?
カラ
2005年09月22日 02:47
 かいちょーさん、コメントありがとうございます。そちらもブログはいつも拝見させてもらっています。じつは私もPTA役員だったりします。お母さん方に混じった父親は、よい餌食のようです。
 学校選択制と地域連携については、品川区の若月教育長が「学校選択制以前に学校が地域とどれくらいつながっていたか。選ばれる立場になって初めて地域との関係の重要さに気付いたのではないか」と話していました。つまり、学校選択制では、学区の子どもを他に流失させないために、逆に学校と地域をより結び付けるという説明でした。まあ、屁理屈とも感じられますが。

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