教員給与見直しで中教審答申
さて、今回は教員給与のお話です。といっても、細かい制度的な話が中心ですし、私は教員給与が高いのはけしからんという世間受けすることを言うつもりもないので、一般の人はつまらない内容かと。いずれ、時間をかけてもっと分かりやすく書くつもりですが、今回は時間がないので許してください。
○教員給与の優遇「維持を」 中教審が答申(朝日新聞03月29日)
「教員給与のあり方を論議してきた中央教育審議会は29日、一般公務員より優遇する根拠となっている「人材確保法」を堅持すべきだと、伊吹文部科学相に答申した。伊吹氏は「答申の線に沿って、財務当局と合意を作りたい」と述べた。
教員給与をめぐっては、昨年成立した行政改革推進法で「人材確保法の廃止を含めた見直し」が盛り込まれ、優遇分に相当する給与の2.76%の削減で政府・与党が合意している。しかし、伊吹氏は「2.76のカットはやらなければならないが、別途2.76を要求することや、2.76を上回る予算要求をすることも可能」と述べ、08年度予算の概算要求では実質的に現状維持以上を求める考えを示した。
人材確保法の優遇部分の削除は、財務省が07年度からの実施を主張していたが、伊吹氏と尾身財務相が昨年末、1年先送りすることで合意。文科省が優遇の実質維持を主張すれば、財務省が反発する可能性は高い。
中教審は答申で「教員の職務の重要性を考え、安定的に優秀な人材を確保していくためにも、人材確保法を堅持することが必要」と指摘。政府が「真摯(しんし)に対応」することを求めた。さらに、副校長や主幹、指導教諭などの職や勤務実態に応じた処遇とし、給与にメリハリをつけることも求めている」
という記事なのですが、待てど暮らせど文科省のサイトに答申がアップされない。わざわざ答申をもらいに文科省まで行く気にもなれないので、知り合いに頼んで手に入れました。
◎人材確保法の維持が最大のポイント
結論から言えば、人材確保法の存続を提言しただけで、あとはこれまで中教審答申や報告などで出されていたものと比べてもほとんど議論の進展がみられません。「骨太の方針2006」で、平成18年度中に結論を出すことになっていたので、無理無理に3月末に答申を間に合わせたという感じがします。
とはいえ、「廃止を含めて検討」となっていた人材確保法の存続を打ち出しただけでも、答申としての値打ちはあるでしょう。
◎教職調整額は結論見送り、ただし方向はわかる
まず、答申で決定事項を整理すると次のようなものです。
●教員の事務負担を大規模校に事務長を置くことができるようにする。
●校長を補佐する副校長を教頭とは別に置けるようにする。
●準管理職の主幹、教員を指導する指導教諭を置けるにようにする。
●副校長、主幹、指導教諭には独自の給与表を設ける。
●一般行政職に比べて2・7%高いとされている部分を縮減しつつ、人材確保法の精神を踏まえて、教員給与にメリハリをつけるための経費の確保を平成20年度予算で図る。
●一律4%の教職調整額は見直すが、具体的にどうするかは今後さらに検討する。
教職調整額については、時間外手当にすべきだとか、休職中は支給対象外にすべきだとか、支給率を勤務実態にあったものにすべきだとかいろいろ意見が出され、まとまらなかったようです。ただ、結局のところは財務省との交渉においてフリーハンドの部分を残しておきたかったというのが本音ではないでしょうか。
教職調整額がどうなるかは、理屈や現場の実態とは関係なく「政治」で決まりそうです。
いずれにしろ、給与扱いが外れてボーナスと退職金から切り離されることだけは、まず確実でしょう。
◎教員特別手当や特殊教育調整額は廃止・縮減
次に諸手当ですが、だいたい次のようになっています。
●教員特別手当はメリハリのある給与実現の財源とするため廃止または縮減。
●特殊教育の調整額は、特別支援教育への移行に伴い廃止を含めて検討。廃止しない場合も給与扱いから外し、ボーナスや退職金の算定基礎から除外する。
●部活指導手当の充実を図る。
●多学年手当は、必要性があるかどうか見直す。
●都市部からへき地校に自家用車で通勤している教員に通勤手当とへき地手当の両方が出されていることが適正かどうか見直す。
●管理職手当の拡充を図る。
どうやら義務教育等教員特別手当は、財源に充てるため廃止方向で検討されるのではないかと思います。
問題が多いと思うのは、特殊教育の調整額廃止ですね。全教員が特別支援教育に当たるから必要ないという理屈ですが、そんな学校はほとんどないでしょう。調整額なしで特別支援学級担任や特別支援教育コーディネーターをやれというのは、現実的に言って大変厳しいのではないかと。
部活指導手当の関係では、学習指導要領の改訂に伴い、その位置付けを明確にしていくとして、「正規勤務内で実施しすべきもの」という考え方が示されています。これは部活を教育課程の中に取り込むということでしょう。
○人事考課の給与への反映で評価基準づくり
このほか答申は、次のように述べています。
「教員の指導力や勤務実績が処遇上も報われるよにうしていくことが必要である。その場合においては、教員の評価は、民間企業で行われているような成果主義的な評価はなじみにくいという教員の特殊性にも留意しつつ、客観性のある評価基準を検討していくことが重要である」
また、指導力不足教員の認定基準づくりも提言しています。
いずれにしろ、教員特別手当は廃止・縮減で財源をつくる一方、主幹や指導教諭などの新しい給与表をつくるほか、人事考課で一般教員の給与にもメリハリをつける。その際、教員評価の基準は文科省がガイドラインを作成する。
人材確保法は存続で押し通し、教職調整額の扱いは財務省や与党との折衝の中で決めていくということになるのでしょうね。
○教員給与の優遇「維持を」 中教審が答申(朝日新聞03月29日)
「教員給与のあり方を論議してきた中央教育審議会は29日、一般公務員より優遇する根拠となっている「人材確保法」を堅持すべきだと、伊吹文部科学相に答申した。伊吹氏は「答申の線に沿って、財務当局と合意を作りたい」と述べた。
教員給与をめぐっては、昨年成立した行政改革推進法で「人材確保法の廃止を含めた見直し」が盛り込まれ、優遇分に相当する給与の2.76%の削減で政府・与党が合意している。しかし、伊吹氏は「2.76のカットはやらなければならないが、別途2.76を要求することや、2.76を上回る予算要求をすることも可能」と述べ、08年度予算の概算要求では実質的に現状維持以上を求める考えを示した。
人材確保法の優遇部分の削除は、財務省が07年度からの実施を主張していたが、伊吹氏と尾身財務相が昨年末、1年先送りすることで合意。文科省が優遇の実質維持を主張すれば、財務省が反発する可能性は高い。
中教審は答申で「教員の職務の重要性を考え、安定的に優秀な人材を確保していくためにも、人材確保法を堅持することが必要」と指摘。政府が「真摯(しんし)に対応」することを求めた。さらに、副校長や主幹、指導教諭などの職や勤務実態に応じた処遇とし、給与にメリハリをつけることも求めている」
という記事なのですが、待てど暮らせど文科省のサイトに答申がアップされない。わざわざ答申をもらいに文科省まで行く気にもなれないので、知り合いに頼んで手に入れました。
◎人材確保法の維持が最大のポイント
結論から言えば、人材確保法の存続を提言しただけで、あとはこれまで中教審答申や報告などで出されていたものと比べてもほとんど議論の進展がみられません。「骨太の方針2006」で、平成18年度中に結論を出すことになっていたので、無理無理に3月末に答申を間に合わせたという感じがします。
とはいえ、「廃止を含めて検討」となっていた人材確保法の存続を打ち出しただけでも、答申としての値打ちはあるでしょう。
◎教職調整額は結論見送り、ただし方向はわかる
まず、答申で決定事項を整理すると次のようなものです。
●教員の事務負担を大規模校に事務長を置くことができるようにする。
●校長を補佐する副校長を教頭とは別に置けるようにする。
●準管理職の主幹、教員を指導する指導教諭を置けるにようにする。
●副校長、主幹、指導教諭には独自の給与表を設ける。
●一般行政職に比べて2・7%高いとされている部分を縮減しつつ、人材確保法の精神を踏まえて、教員給与にメリハリをつけるための経費の確保を平成20年度予算で図る。
●一律4%の教職調整額は見直すが、具体的にどうするかは今後さらに検討する。
教職調整額については、時間外手当にすべきだとか、休職中は支給対象外にすべきだとか、支給率を勤務実態にあったものにすべきだとかいろいろ意見が出され、まとまらなかったようです。ただ、結局のところは財務省との交渉においてフリーハンドの部分を残しておきたかったというのが本音ではないでしょうか。
教職調整額がどうなるかは、理屈や現場の実態とは関係なく「政治」で決まりそうです。
いずれにしろ、給与扱いが外れてボーナスと退職金から切り離されることだけは、まず確実でしょう。
◎教員特別手当や特殊教育調整額は廃止・縮減
次に諸手当ですが、だいたい次のようになっています。
●教員特別手当はメリハリのある給与実現の財源とするため廃止または縮減。
●特殊教育の調整額は、特別支援教育への移行に伴い廃止を含めて検討。廃止しない場合も給与扱いから外し、ボーナスや退職金の算定基礎から除外する。
●部活指導手当の充実を図る。
●多学年手当は、必要性があるかどうか見直す。
●都市部からへき地校に自家用車で通勤している教員に通勤手当とへき地手当の両方が出されていることが適正かどうか見直す。
●管理職手当の拡充を図る。
どうやら義務教育等教員特別手当は、財源に充てるため廃止方向で検討されるのではないかと思います。
問題が多いと思うのは、特殊教育の調整額廃止ですね。全教員が特別支援教育に当たるから必要ないという理屈ですが、そんな学校はほとんどないでしょう。調整額なしで特別支援学級担任や特別支援教育コーディネーターをやれというのは、現実的に言って大変厳しいのではないかと。
部活指導手当の関係では、学習指導要領の改訂に伴い、その位置付けを明確にしていくとして、「正規勤務内で実施しすべきもの」という考え方が示されています。これは部活を教育課程の中に取り込むということでしょう。
○人事考課の給与への反映で評価基準づくり
このほか答申は、次のように述べています。
「教員の指導力や勤務実績が処遇上も報われるよにうしていくことが必要である。その場合においては、教員の評価は、民間企業で行われているような成果主義的な評価はなじみにくいという教員の特殊性にも留意しつつ、客観性のある評価基準を検討していくことが重要である」
また、指導力不足教員の認定基準づくりも提言しています。
いずれにしろ、教員特別手当は廃止・縮減で財源をつくる一方、主幹や指導教諭などの新しい給与表をつくるほか、人事考課で一般教員の給与にもメリハリをつける。その際、教員評価の基準は文科省がガイドラインを作成する。
人材確保法は存続で押し通し、教職調整額の扱いは財務省や与党との折衝の中で決めていくということになるのでしょうね。
この記事へのコメント
総務省はこの額をどのぐらいと見積もっているのでしょうか。結構な額になるのでしょうね。やるのならもっと早くからやっていれば団塊の世代の退職金を抑えられたのにと思ってしまいました。
面白い。
ビジネスとしてはこの世代はねらい目でしょうね。何にでも興味を持ちそうですから。それでいて自分で自分のことは決めている。人から指図されるのが嫌いという世代でしょうか。