斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS 教員免許更新制の範囲

<<   作成日時 : 2006/05/28 22:35   >>

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 今回は教員免許の更新制についてです。まず、私は更新制に反対です。かける時間と費用に対して、その効果がはなはだ疑わしいからです。今さら、このようなものを現行教員免許保有者に適用しようなどというのは、嫌がらせ以外のなにものでもなく、とても政策とは呼べません。

◎免許更新制「現職教員にも適用すべき」 中教審が案(朝日新聞5月27日)
 教員の質向上を目的とした教員免許更新制について、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)のワーキンググループ(WG)は26日、現職教員にも適用することが「適当」とする案をまとめた。終身有効とされている教員免許は「絶対不可侵のものではなく、公共の要請により、合理的な範囲で新たに制約を課すことは許される」とした。中教審は今後、教員養成部会に報告して結論を出す。肯定的な意見が多いとみられ「適用」の公算が大きくなった。


 中教審の教員養成部会は昨年、教員免許更新制を導入するという趣旨の中間報告をまとめたしたが、現行教員免許保有者に更新制の対象にするかどうかは結論が出ず、先送りしていました。

 それが現行教員免許保有者も対象とするということでまとまりそうだというのが、上記の記事です。ワーキンググループのメンバーの顔ぶれからは、このような結論になるとは私としては考えづらいので、これはほかの中教審委員や与党などからの圧力にこうし切れなかったではないかと想像するのですが。

●じつは免許更新制に消極的だった文科省
 教員免許の更新制は、これまでも何度かテーマになりましたが、旧文部省時代の教員養成審議会、文科省になってからも中央教育審議会は、いずれも実現は困難として見送ってきました。いろいろと理由はありますが、医者などの大学で養成されるほかの免許制度との整合性、さらに公務員全体の身分問題にかかわるためで、文科省は消極的だったといってよいと思います。

 流れが変わったのは2004年に当時の中山文科相がいわゆる「中山プラン」の中で、教員免許の更新制導入を提言してからです。これはあまりに唐突でした。おそらく中山文科相の意向が強く働いたものだと思います。


教員免許更新制で問題教員追放はじつはできない
 従来から教員免許更新制が求められてきた理由は、問題教員の排除のためでした。しかし、問題教員排除と大学での養成による免許制度はまったく別の問題であり、この整合をつけるのが難しかったのは、何度も旧文部省・文科省が見送ってきたことからも明らかです。

 そうするうちに、大きく事情が変わる出来事が起きました。それは2002年度から施行された不適格教員、指導不足教員などの教職以外への配置転換制度です。これによって全部の都道府県に問題教員の認定システムが整備され、認定後の研修の成績が悪ければ、教員以外の職種に強制的に異動されるようになりました。

 実際は、この配転制度の創設で実質的に問題教員対策は終わっているのです。

 考えても見てください。例えば10年ごとの免許更新で、問題教員を排除するとしようとすると、一度免許更新した問題教員の排除は10年後でないとできないことになります。また、運転免許の更新ではなのですから、更新時の講習会の成績でいきなり不更新とすることはできません。日常的な教育活動への評価がもとになっていないと問題教員の判定などできるわけがないのです。つまり、教員免許更新制で問題教員を排除するのは、じつは教職以外の職に配置転換する制度よりもはるかに難しく、非効率的なのです。

 問題教員を排除するための行政的仕組みがなかった時代に、唯一可能な方法として考案されたのが免許更新制です。そして、教職以外への配置転換制度が創設され、問題教員排除の方法としての免許更新制は意味を失った、、、、はずでした。


●免許更新制の狙いをすり替えた中教審ワーキンググループ
 このように免許更新制に問題教員排除の意味がないのに、どうして文科省はその導入を打ち出したのでしょうか。それは昨年11月の中教審ワーキンググループの中間報告を読むと分かります。中間報告には、問題教員の排除などという狙いは一言も書いてありません。代わりに免許更新制導入のために大幅な改革が求められたのが大学の教員養成の在り方でした。

 つまり、この時点では中教審ワーキンググループは、中山文科相に諮問された見当違いな教員免許更新制を大学の教職課程を文科省主導で再編するために利用したといってよいと思います。


●社会の教員不信がさらに教員の質の低下を招くという皮肉
 中教審ワーキンググループの中間報告を読む限り、現行教員免許保有者に対する更新制の適用は見送りになると思われました。事実、ワーキンググループの委員から、現行保有者への適用は実質的困難という声を聞きました。

 それが、現行免許保有者まで対象にすることになったのは、中教審のほかの委員から問題教員排除のために必要だという横槍が入り、文科省もそれに乗ってしまったのではないかと思います。

 この背景にはあるのは、教員不信という社会的状況でしょう。既に問題教員排除の意味がなくなった教員免許更新制の導入が諮問され、大学教職課程の文科省主導の改革という狙いにすり替わって中間報告されれば、また現行免許保有者への適用という圧力がかかる。まるで、教員へのいやがらせか、制度や現状を全く理解していない狂信者のたわごととしか思えません。

 では、これが実現するとどうなるか。国公私立学校を問わず現在の教員全員が、10年ごとに年間30時間、学校から離れて更新研修を受けることになります。更新研修自体の成績で免許不更新にすることは実際問題としてできないので、参加教員は講習会をだまって聞いているだけです。時間の無駄、予算の無駄、、、、犠牲になるのは結果的に子供です。

 教員不信の社会が、さらに教育を悪くしていく、、、、言いようのない皮肉です。


●あなたの教員免許は既に死んでいる、、、、
 ところで、新聞などには現職教員への適用と書いてありますが、ここでは現行免許保有者と書きました。これは、問題教員対策という教員問題ではなく、免許制度の問題だからです。つまり、現職教員への適用というのは、教員でなくても教員免許をもってる現在の人々すべてが更新制の対象となるということです。

 文科省は言うでしょう。講習を受けずに免許が失効した人については、講習を受ければすぐも免許が復活するから大丈夫と、、、、そうです、教職課程がある国立大学(たぶん私大は講習会をしません)にわざわざ通い、年間30時間の講習を受ければよいだけです。

 そんなことができる人間がどの程度いるか、、、「おまえの免許はもう死んでいる」

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
ほんと同感ですよね。
でも、お役所のえらいさんは
実際の事務が混乱するようなことを
言い出すんでしょうかねぇ…
bluetrain-twexp
2006/05/29 05:55
簡単ですよ。実際の事務をする役所は文科省ではないからです。

それにしても、更新制でいままで出したすべての教員免許授与者への対応をしなければならなくなったわけですから、この手間は大変です。狙いは、教員になる気もないのに教職課程を取る学生の削減ではと思っています。

でも、教員になる気満々で、子供のころから教員になるつもりだったような人々が、現場のほとんどを占めるようになるというのも、私自身はあまりぞっとしませんが。
カラ
2006/06/02 02:58
2種免許を1種免許に更新しようとしている人は,どうなるのでしょうか!?
自治体が主催する更新のための講義は,希望しても受講できないという現状。また,多くの講義を取得しなければならないため,かなりの年数がかかるというのです。
更新するより先に免許の期限が切れるということがありえるかも(笑)

大学や短大などの教育課程を取らなくても教員免許が取得できる方法があります。もちろん,教師になることができます。
yamo
2007/03/27 09:52
短大卒相当の2種から大卒相当の1種への切り替えは、現職教員にとっては上進制度の問題であり、免許更新制とは直接には関係なとと思います。
なお、教員資格認定試験については極めて例外的な制度であり、合格者数も少数なため議論の対象には入れていません。
カラ
2007/03/27 16:32
矛盾だらけの制度です。
「受講できない→更新出来ない→免許剥奪→失職」を意味します。
教師を失職させる制度は世界に類を見ません。
改正された教育基本法にすら、「教員については…その身分は尊重され、待遇の適正がはかられるとともに」と述べられています。明らかに、教育基本法に違反する制度なんです。
それに、毎年10万人の受講対象者がいるのに、講座を開設する教育機関の絶対数が足りません。受講義務を課せられているにもかかわらず、受講出来ないことが予想されます。その年に受講出来なかった教員が翌年には受講できる保障は全くないのです。
他県へ受講しに行く、ということが考えられますが、受講料も交通費も宿泊費も全て自己負担です。文科省は受講料は3万円くらい、と打ち出していますが、受講料は各大学が決めること。実際、東京都の教育機関が今年行う予備講習は10数時間で5万円でした。
全教では教員免許更新制を廃止する署名を8月25日を最終集約として取り組んでいるようです。
このまま、試行を既成事実として実施すれば、現場は大混乱になります。
variedfan
2008/07/07 00:29

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