斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS 教育再生会議の狙い

<<   作成日時 : 2006/10/24 21:43   >>

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 寒くなりましたね、大慌てで冬物を出しました。今回は、教育再生会議、というか安倍政権の教育改革の狙いは何かというお話。現在の教育改革のキーパーソンの一人は、下村博文官房副長官ではないかということは、組閣人事の際にも指摘しました。

 学習塾経営者、都議を経て国会議員になった下村氏は、教育行政にも非常にくわしい。これまでも、チャータースクールや教育バウチャーなどの国会議員の研究会などの中心メンバーでした。安倍首相の教育政策に関するブレーンともいわれています。

 その下村氏が中央公論11月号の特集「公立学校は立ち直るか」の中のインタビューに登場しています。もちろん、締め切りの関係上、教育再生会議発足前のインタビューなのですが、これを読むと、教育再生会議と安倍政権の向かおうとすうるところがよく分かります。ある意味、その内容の是非は別にして、現在の必読資料の一つではないでしょうか。


○「能力のない教員には辞めてもらわなければならない」
 教員免許制の更新制は中教審答申を受けて、既に文科省が来年春の通常国会に法案提出の準備を進めています。これをなぜ、いまさら教育再生会議で取り上げるのか。下村氏は「能力のない教員には辞めてもらわなければならない」と断言します。

 つまり、10年に一度、免許更新研修を受けるという文科省案では「適性のない教師を排除できる実効性のある制度」にはならないからだという理由です。


○「全国一律に展開できるものではないが、学校選択制も推進したい」
 学校選択性は、親が根拠のない風評や施設の優劣で左右されるという面もあります。これは現行では公立学校に自由に使える予算がなく、教員人事の権限もないため、特色ある教育を競うということに限界があるからだと下村氏は指摘して、各学校に予算、人事権まで与えることを求めています。


○「国の基準を満たせない学校は廃校になっても仕方ないし、そのような学校にいた先生は、廃校とともに職探しをしてもらうことになる」
 下村氏の考えている学校評価は、文科省が現在打ち出しているものよりもさらに厳しいもののようです。学校評価基準により、国の査察官が評価して、数年間の猶予期間の間に基準を満たせない学校は廃校にするというイギリス方式のようですね。



 そして、これらの行き着く先が
○「公立学校も独立地方法人のように形式になり、そのうえで各学校に予算権と人事権を移譲する」「究極的には公立学校は『私学化』すべきだ」

○「教職員組合の反発は強いだろうが、公務員として定年まで勤められるシステムを破壊することになる」


 とはいえ、公立小・中学校は私学のように子供を選抜するわけにはいかないので、いろいろな子供がくることになるわけですが、「子どもの問題行動は親の責任だ」ということをはっきりさせるというのが、下村氏の意見です。
「(イギリスでは)子どもの非行や不登校は親の責任とし、親に罰金刑を科している」

 このあたりは、国会で継続審議になっている教育基本法改正案(政府案)の中に、新たに家庭教育の項目が追加されていることと関連しそうです。



 さて、この新自由主義路線ともいえる下村氏の教育改革案は、どう評価されるか。また、教育再生会議の実際の審議で、どこまで反映されるか。

 現場の教育関係者にとっては、とても認められないような意見ですが、おそらく下村氏の意見に賛成する層は、社会ではおおいのではないでしょうか。

 学校選択による自由競争、市場仕儀の学校教育への導に対する批判は、ようやく感情論ではなく、理論的に社会を納得させられるような批判態勢が整ってきた段階でしょう。

 しかし、それらの批判の根拠は、現行の学校運営システムや公立学校の在り方、公務員としの教員を前提としたものがまだ多いのではないか。これに対して、下村氏のように一挙に人事権や予算権を各小・中学校までおろすという意見が出たとき、どうそれに答えるのか。ある意味、これは大昔から「左」「革新」が主張していたことですからね。

 まあ、机上の空論というふうに切って捨てるのが一番簡単なんですが、もし教育再生会議がその方向で本当に動き出したら、、、、、。

 問題は、本当に教育再生会議が機能するかどうか、それとも選挙向けのフレーズや政策を提供するだけに終わるか、、、、、でしょう。

 それにしても、この公立小・中学校改革の最大の敵は、文科省ではなく都道府県だとあっさりと見破る下村氏、、、、、そのへんの道徳や愛国心ばかり口にしている自称教育改革者の旧来型文教族とはタイプが違う人物のようです。



 ※蛇足的注釈=市町村立の小・中学校の教育は、実際には文科省に支配されているのではになく、都道府県教委に支配されているのです。そして文科省と都道府県はときに対立し、あるいは騙し合う関係です。文科省による都道府県教委支配体制というのは、実は単なるイメージにすぎません。文科省も都道府県も、文科省の支配下に都道府県教委が置かれているという図式の方が仕事がしやすいし体面も保てるので、そのような体裁を社会に対してとっているというのが実態です。教育行政における公立小・中学校の既得権者は都道府県である、これは教育にくわしい人間でも見落としている人がたくさんいます。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
公立小・中学校改革が実現するかどうか行方はわかりませんが。少子化というファクターがどれぐらい議論に影響しているでしょうか。私は中央公論11月号は読んでいないのですが。安倍政権や下村氏は少子化という要素を頭に入れているのか、子供の数はしばらくの間増えることはない、と判断するのが妥当でしょうから、それによって教育関係の予算の配分がどう変わるのか。これだけ子供が減ってしまっている日本にふさわしい教育のビジョンやモデルがあるのかどうか。気になったのでコメントさせてもらいました。
かかか
2006/10/26 18:32
基本的に教育への市場原理の導入、教育の個性化・特色化など現行のすべての教育改革は、少子化により学校があまってるということを前提にしています。だから、画一的教育からの転換という意味で少、子化は日本の教育に大きな影響を与えていると言えます。
 教育予算の関係では、文科省は現行水準を維持して子供一人当たりの教員数増加など教育の質の向上を図ろうという考え方。
 これに対して、財務省などは子供が減った分だけ教員数や教育予算も純減するのが当然という考えた。
 現行では、5年間で教員一万人の純減を図るという政府方針なと゛をみると、財務省の方針が採用されていると言ってよいと思います。
カラ
2006/10/29 03:00
どうも、お返事ありがとうございます。財務省案のほうが妥当なのでしょうね。子供が減り、そして教員数が減ることにより、どうあがいても教員の淘汰は避けられないでしょう。教員の能力を判定するときにどういう基準で能力が判定されるのか。私の意見ですが担当科目の知識の他に学校という公共空間にふさわしい振る舞いができるかどうかのテストや面接もしてもらいたい、と言う願望がある。最近のいじめ報道を見て気になるのが、教員が生徒を職務の対象者として大事にしなければならないのにそうでないケースが目立つようだ。しかし、マスコミは「教員が職務の対象者(生徒)の身の安全を守らないのはなぜだ」と言うような指摘をしていない気がするので。教員に公共空間でふるまう能力を身につけてもらえるよう期待したい。
かかか
2006/10/30 22:01
まあ、教育関係者の代弁のようで恐縮ですが、子供が減るから教員数も予算も減って当然というのは、現行の教育条件がベストであるという前提に立つ考え方だと思います。

もし、現行の教育条件が不十分だとするならば、少子化によりあまる予算、教員数を維持すれば教育条件の改善につながります。教員の質の向上は重要ですが、教員数を削減すれば教員の多忙さの改善はできないのでは。

学校教育にふさわしい人間をテストで判断することは、まず無理だと思います。現実的には、ふさわしいと思える人間を採用して、育てていくしかない。現行水準よりも教員を増やして、多忙な状況を改善することは、いたずらに教員の適格性を論ずる(もちろん問題教員の排除は必要ですが)よりも教員の質を上げる早道ではないでしょうか。
カラ
2006/10/31 02:21

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