斎藤剛史の教育ニュース観察日記

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zoom RSS 私立中高一貫と履修問題

<<   作成日時 : 2006/11/05 01:00   >>

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高校の履修不足・必修逃れの問題は、前のエントリーで区切りをつけました。ただ、前のエントリーに書いて、修正後に削除したものがあり、もう一回それに触れておこうかと。書く気になったのは、このようなニュースをみつけたからです。

○履修不足:世界史B、中3年で履修…中高一貫の私立茨城高(毎日新聞)
 私立茨城高校(水戸市)で、3年生の175人が世界史Bの履修不足に当たることが28日、茨城県の指摘で分かった。同校は中高一貫校のため、既に世界史Bを中学3年の時に履修しているが、県からは「高校の取得単位としては認めない」とされたという。同校によると、家庭科なども履修不足に当たる恐れがあるという。同校関係者は「これから補習をしなければ」と困惑している。


 履修問題で、履修不足が指摘された東京の私学は約240校中11校でした。私学の履修不足問題の発生率は、文科省調査によると全国平均で15・5%ですから、東京の発生率はそれよりも低いことになります。

 有名進学校が軒を連ねる東京の私学で、この数字はどうみても低すぎる。常識的に考えても納得できないでしょう。

 東京都の調査に各私学が嘘の回答をしたのでなければ、問題発生率が低い原因は東京の私学には中高一貫校が多いことが原因かもしれません。中高6年間のうち、5年間ですべとのカリキュラムを終えて、最後の1年間は受験シフトで集中的に勉強する、、、、これは私立中高一貫の宣伝文句の一つで、誰も不思議に思いません。中学校と高校のカリキュラムには重複も多く、精選すれば履修不足なしで効率的運用が可能です。

 ですが、、、、ここに問題があります。


○私立中高一貫校は、制度的には中高一貫校ではない。
 学校教育法改正により中高一貫校が法律的に整備されました。公立の中高一貫校はこれによって生まれたものです。このうち、まさに6年一貫の中等教育学校、中学校と高校の設置者が同じ「併設型」中高一貫校は、学習指導要領の特例が認められており、中学校段階で高校のカリキュラムの一部を勉強することが可能です。

 しかし、有名校を含むほとんどの私立中高一貫校は、この法律に基づく中高一貫校の指定を受けていないのです。法律が比較的新しくできたこと、公立中高一貫校をつくることが目的と社会的には理解されていることなどが理由です。まあ、昔から中高一貫教育をやってきたのは私学であり、それを今さらお上の指定など受ける必要はないということでしょう。

法令に基づく中高一貫校のリストはこちら

 ここで重要な点は、中学校でも高校のカリキュラムの一部を履修させてもよいという学習指導要領の特例は、学校教育法改正によって初めて認められた制度であるということです。


○本当は、ほとんどの私立中高一貫校は学習指導要領違反に当たる。

 つまり、ほんどの私立中高一貫校は、昔から現在に至るまで、学習指導要領に違反しているのです。

 教育関係者の中にも私立は学習指導要領にとらわれないと思っている人もいますが、それは間違いです。学校である以上、学習指導要領を守る義務がありすま。ただ、私立には公立では禁止されている宗教教育が行えたり、建学の精神などの関係で日の丸・君が代の規定の適用を受けないなどの特例があるだけです。

 中学校で高校の勉強をするから、時間的に余裕が生まれ、のびのびと大学受験に備えることができるという私立中興一貫校は、学校教育法改正前は学習指導要領違反。学校教育法改正後も法令に基づく中高一貫校の指定を都道府県から受けていない学校では、学習指導要領違反となるのです。

 なぜ、このようなことが今まで問われなかったのか。いろいろな事情があると思います。

 ○私学を管轄するのは都道府県の知事部局なので、カリキュラムにまで口を出さなかった。
 ○私学の自主性尊重ということで、大目に見ていた。
 ○卒業者には、東大卒の有力者、官僚、政治家が多く問題にできなかった。
 ○知っていたけど、行政を含め誰も気にしなかった。
 ○実は、学習指導要領だとほとんどの人間が気がつかなかった。


○公平さ、平等さを求めるならば、この際、私学問題も徹底的にやったほうがよい。
 私自身は、私学はほとんど自由な教育をしてもよいと思っています。それこそ市場原理、競争主義で生きているのですから。

 ただ、私学の財政は授業料だけでなく、私学助成金も大きなウエートほ占めています。つまり、国民の税金も使われているわけです。

 今回の履修不足・必修逃れ問題で、公立高校の進学校は大きなダメージを受けました。だから、私学もやっつけないと公平ではない、、、、というつもりはありません。

 ですが、今回の騒ぎをルールを守る公正な社会づくりへの一歩であり、慣行や現実的対応などの名目で不正義が蔓延することは許さないという社会の意思だったと受け止めるならば、当然、私学の学習指導要領違反をも問うべきでしょう。

 まあ、過去のことには目をつぶるということが今回の対策で打ち出されたわけですし、法令に基づく中高一貫校の指定さえ受ければ、学習指導要領の特例が活用できるのでほとんど私立に実害はないと思います。

 ただ、新たな都道府県による新たな審査が必要となるので、いろいろと行政に調べられることにはなるでしょうが。


 もし今回の騒ぎが、教員バッシングや公務員批判などの延長による社会のフラストレーションの発散でないとするならば、私立中高一貫校の学習指導要領違反も徹底的に問題にすべきです。

 仮に、この私学の学習指導要領違反を「もういいでしょう」とか「うちの子供は私学を受験させるつもりだから」と見逃せば、

 今回の騒ぎは、結局のところ公務員叩き、教員叩きと同様に

 社会の鬱憤晴らしのネタだったにすぎないことになります。

 そして、そのような社会的背景で論じられる教育改革は、

 大学受験の現実に対応するよう学習指導要領を変えるべきだ

 という、とてつもなく危ない論理に発展しかねません。

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未履修問題:02
高校は義務教育ではない。つまり民間同士の「教育」という契約を親と学校が結んだことになる。であれば,その義務を怠った学校は親に対して瑕疵を負うことになる。それなのに,学校も親も文部科学省に対して穏便な解決を求め,文部科学省も必要時間の半分で手を打つことによって収集させようとしている。当事者である卒業生や現役の子どもたちはどのように考えるであろう。何でも無理を言えば通ってしまうと勘違いするのじゃないか。しかも未履修の学校は進学校が多いという。ならば今後の日本のリーダーは教育的欠陥... ...続きを見る
大学 高校 中学 小学受験@親の立場@大...
2007/03/18 23:39
未履修問題:02
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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
TBありがとうございました。私立の中高一貫校の多くは,法律的には中高一貫校ではないとのご指摘,その通りですね。ただ,今の高校の学習指導要領では,週5日制のもとであっても,ほとんどの必履修科目をほぼ2年間で終わらせるカリキュラムを組むことが可能です。ですから,私学のいっている精選が,即学習指導要領違反に直結するわけではないと考えます。そのあたり,精査が必要かと考えます。
madographos
2006/11/05 04:38
私の説明不足で分かりづらかったようです。
問題は、中学校段階で高校の学習内容を実施することです。
中学校と高校の学習指導要領は全く別のものであり、法的には中高一貫校の指定を受けていない限り、中学校で高校のカリキュラムの一部を実施し、それを履修とカウントすることは学習指導要領違反です。
では、このようなことを全部の私立中高一貫校がやっているかというと、おっしゃるようにそれは調査が必要でしょうね。
カラ
2006/11/05 10:56
いつも読ませてもらっています福島のsonoと言います。歯切れの良い文章感心しています。私立も問題伊吹大臣は今後どうするのだろう。などなど考えています。
ところで、カラの知る範囲で教職員組合と北朝鮮との関係についての考えを教えて頂きたいのですがよろしくお願いします。
sono
2006/11/05 11:59
カラさんをカラなどと呼び捨ててしまいました。失礼しました。
sono
2006/11/05 12:01
calaさんのコメント感服しました。
私学の中高一貫教育問題と未履修の問題まさしくコメントされている通りだと思います。
今回の未履修問題が、前倒し(或いは先取り)と言われるカリキュラムを問題としているのか、文科省の正式見解は出された、または出されるのでしょうか。
masa
2006/11/05 18:21
sonoさん、コメントありがとうございます。さて、北朝鮮と日教組ですか。役員が何度も訪朝していることは知ってますが、それ以上は分かりません。反日教組の組合ウオッチャーのブログには、その手のことは結構出ているので、検索してみたらいかがでしょうか。

masaさん、コメントありがとうございます。文科省の調査後もボロボロと履修不足校が出ているようですが、今のところ高校の問題に限られているので、文科省も私立中高一貫までは調べていないと思います。まあ、高校部分だけみれば、確かにセーフと言えなくもないですから。
カラ
2006/11/06 02:17
これまで教育現場にいて
私立の中高一貫校の
教育について気づかなかったなんて
自分もまだまだだなぁと思いました。
目が覚めた思いです。
silvia
2006/11/06 22:26
silviaさん、お久しぶりです。
衆院の教基法特別委員会の審議で、文科相が中学校の調査も実施する意向を示したというニュースが出ました。さて、これからどうなるのでしょうか。
カラ
2006/11/07 11:38
はじめまして。
私の親類の子供が自修館に行っています。
先日保護者会があったみたいで、2008年度からすべて50分授業にして、土曜日も4コマの授業をやるそうです。
その理由なんですが、
・センター試験に合わせて5教科7科目の授業をやる
・上位と下位の成績格差が広がっているらしく、特に下位の生徒の底上げ(80分授業がもたないらしい)
・土曜日を勉強に利用していないアンケート結果
などの説明があったそうです。
しかし、単位認定の問題や履修問題には一切触れていないそうです。

そんな話を聞かされたんですが、在学中に学校の方針が大きく変わる展開に不安を覚えていて、状況次第では転校させようかと考え始めているようです。
ここを受験した時は完全週休2日制だと聞いていたんですが、これで土曜日も授業のために学校に行くとすれば、どうなんでしょうか。
在校生に途中から方針を変えることをするのは、一種の詐欺行為だと思うんですが。
いかがなものでしょうか。
Brno
2007/03/25 22:04
Brnoさん、コメントありがとうございます。
私学の教育方針の変更については、茨城県で関連した裁判があったと記憶しています。細かいことは知りませんが、確か入学の際に保護者が明らかに期待した教育方針や内容の変更を学校が勝手に行うのは消費者保護の立場から問題があるという指摘がなされていたはずです。

ただ、教育方針などを決定する権限は学校にあるため、変更自体が違法とはならないと思います。要は学校側が教育方針の変更に当たり、どれだけ保護者に説明責任を果たし、理解を得る努力をしたかという点が争点になるのではなでしょうか。
カラ
2007/03/27 00:29

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